その2 年末調整もやるのかな

大手事務所勤務時代に行っていた年末調整。開業したあなたはこれを従業員に指示しなければなりません。といっても、奥様のみが青色専従者であれば簡単ですのであなた自身がチャチャっと作成してしまえばよいですし、状況次第では作らなくても支障ないこともあります。

 

年末調整は3枚

最近の年末調整は、電子化が進んできたのでWebやイントラの上で済んでしまう企業も増えていますが、紙の時代には色違いの3枚の用紙が配られたのを覚えていますか。①前年末に出した今年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)届出書」、②翌年分の「給与所得者の配偶者控除等申告書」③今年分の「給与所得者の保険料控除申告書」の3つです。

令和2年(2020年)分からは、①は「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という長い名前の用紙にマイナーチェンジされています。

 

8万8千円

年末調整は正確には前年の年末から始まります。翌年(つまり今年)の扶養家族数などを把握し、毎月の給料に係る源泉徴収額を決めるためです。したがって、開業後最初の給与を支給する時までに、上記①の今年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)届出書」を作成しておく必要があります。これを用意しておかないと源泉徴収金額が高くなってしまうからですが、上記のように月給を88,000円以下に抑えるのであれば関係ありません。

そして年末のタイミングで、今年の変更有無の確認と翌年分の更新のために、上記3つの書類を改めて確認又は作成し、各種所得控除などを考慮のうえ12月の源泉徴収金額を調整します。これも月給を88,000円以下に抑えるのであれば税額には影響ないのですが、年間給与が50万円を超え、かつ年末調整を行わないと、法定調書と呼ばれる税務署への提出書類が一つ増えます。どっちの作業を取るか、もう好みの問題ですかね。

 

給与所得の源泉徴収票

その年の給与支払いが完結すると、年間の給与支払額、源泉徴収額を集計して、従業員個人ごとに源泉徴収票を作成しなければなりません。これは「法定調書」と呼ばれる書類の一つで原則として翌年1月末までに税務署に提出することが義務付けられています。ただし、年間給与が500万円以下でかつ年末調整を行った人の分は税務署への提出が免除されます(年末調整を行わないと50万円以下)。

しかしながら、従業員本人と市区町村への提出義務は免除されないので、結局作成は必要です。

 

法定調書の提出

給与所得の源泉徴収票の作成と提出は、eLTAX(エルタックス)というe-Taxの地方税版を利用するのが便利です。使い方はe-Taxと似ていますが、別途初期設定等が必要です。

このシステムで源泉徴収票(内容は同じですが、給与支払報告書という名称になります。)を作成して市区町村に提出すると、同時に税務署の方にも必要な書類が自動的に提出されます。e-Taxでも作成できますが、これだと税務署への提出しかできないので、市区町村には別途紙又はeLTAXで再度同じものを作成しなければなりません。

源泉徴収額が0円の場合でも、0円と記載して作成します。また、従業員全員の源泉徴収票を集計して「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」という書類を作成する必要があるのですが、こちらは税務署に提出すべき個々の源泉徴収票がない場合であっても、ない旨を記載して税務署に提出しなければなりません。

e-Taxは使ったことがあっても、さすがにeLTAXは使ったことがない方がほとんどだと思います。私もその一人ですが、マニュアルは分厚いし(丁寧ですが)、知らない用語も多いし、結構時間がかかります。青色専従者1名だけであれば、紙の方が多分早いでしょうが、何事も経験ですので、ぜひチャレンジしてみてください。

 

処分通知

1月末までにこれらの書類を提出して、もはや何をやったか忘れた5月中旬、eLTAXから「特別徴収義務者用税額通知」というものが届きます(令和5年までは、後日、紙も郵送されます)。このような通知は「処分通知」という物騒な名前がついていますが、処理が完了したのでお知らせします、という意味です。

通知が発行されると、登録してあるメールアドレス宛に連絡が来ますので、eL-TAX(Web版ではなくでDL版の方)を開いて、処分通知のページから通知をダウンロードします。ダウンロードの際には、メールに付されているパスワードが必要になります。ダウンロード後、eL-TAXへの取り込みを行えば、内容の表示や印刷が可能です。案内に従って操作すれば簡単です。

通知には、給与を支払う全員分(奥様を専従者としているだけなら1名分)について、その年(現在進行中の年)の給与所得に係る源泉徴収金額が記されているので、これに従って源泉徴収することになります(6月~翌年5月)。上記のとおり月額給与を8万8千円以下にしていれば、徴収額は0円になります。

紙の方は、従業員全員分の、その年の要徴収額が記載された一覧と、各従業員への配布用の紙片が入っています。