その2 税制適格ストックオプション

基本は税制適格の役員・従業員向け無償ストックオプション

IPOに際してもっともポピュラーなのが、税制適格の役員・従業員向け無償ストックオプションでしょう。「税制適格」、「役員・従業員向け」、「無償」という3つのキーワードが並んでいますね。「税制適格」とは、一定の要件を満たすことで、税務上の優遇が得られるという意味です。一定の要件については、他の書籍・サイト等でご確認いただくとして、ざっくりと大株主以外の取締役・従業員が主に該当するとご説明しておきます。

 

ストックオプションには、その①発行(付与、割当)、②行使(株式の取得)、③株式の売却の3つのアクションがあります。

 

「無償」の意味するところ

ストックオプションは、取締役会決議によって割当者が決定され、各人に付与されます。付与された人は個別に会社と契約を結び、新株予約権という権利(ライツ)を取得します。この取得は0円でできます。これが「無償」の意味することろです。

 

税制適格ストックオプションには、行使できる期間に制約があり、最速でも発行後2年経ってからです。行使期間は10年程度に定めることが多いので、この期間内の好きな時期に新株予約権を「行使」することができます。権利を「行使」することにより、新株予約権が生の株式(ナマ株)に変わります。この行使は有償になりますので、予約権に所定の代金を添えてナマ株を購入するイメージです。ですが、通常はまだ会社が大きく成長する前の時代に、かつなるべく低額になる方法により算定されています。IPOが上手くいって上場すれば、行使価格よりもはるかに高い株価がつくはずですから、時価よりも格段にお安くナマ株をゲットできます。逆に、株価が低い、もしくは上場が実現しなかったという場合には、行使しなければよいだけですので、儲けはありませんが、損失もありません。

 

税金の考え方

ところで、ストックオプションを行使した時(ナマ株をゲットした時)に税金がかかるというのが、税法の基本的な考え方です。上場によって高い株価が付いている株式を、割安に取得するという行為は、その差額分(行使時の株価 - 行使価格)をタダで利得を得ている、という考え方になります。

 

税率はその人の所得水準によって異なりますが、キャッシュを得ていないにもかかわらず、税金だけが発生するというのは酷です。そこで、庶民たる一般の役員・従業員にはこの「税制適格ストックオプション」の制度を利用することで、行使時には税金がかからない仕組みができたのです。

 

ナマ株を取得したら、そのまま持ち続けて株主としての権利(議決権、配当受領)を享受してもよいですし、機を見て株式売却益を得てもよいでしょう。

株式を売却すれば、その売却益部分(売却時の株価-SO行使価格)には税金がかかりますが、株式の譲渡益としての税率が適用されますので、20.315%の税率ですみます。