「社外役員」と「独立役員」
まず、「社外」に該当するかどうかの判定が必要です。会社法の「社外役員」と東証の上場規則にいう「独立役員」の2つの概念があります。「独立役員」の方が厳しい要件になっていますが、なるべく両方を充足するような方を選任するのが得策です。定義はいろんなところに書いてありますので、ここでは省略します。
社外監査役に求めるもの
続いて、社外役員に何を求めるのかを考えましょう。
分かりやすいのは監査役や監査等委員です。最低3名の監査役のうち1人は社内出身の常勤監査役を置き、日常の監査にあたってもらいます。会社の事業内容をよく知っていて、社員や各部署とのコミュニケーションが取れる人が望ましいです。
残る2名については、常勤監査役の知識や経験の及ばない部分をカバーできるようなスキルを持った方がベストです。例えば法務面を補完する弁護士や司法書士、会計・税務面を補完する公認会計士や税理士といった具合です。もちろん資格の有無は本質論ではありませんが、常識的に専門的な役割が期待できる、対外的にも説明しやすいといった側面から、資格保持者が重宝されることが多いのが実態です。
社外取締役に求めるもの
次に取締役については、監査・監督だけでなく、経営のアドバイザーとしての役割が期待されることもあります。つまり社長の相談相手というわけです。そのため、人生の大先輩であったり、業界の重鎮、他社の経営者又はその経験者、官庁出身者、その他の有識者(大学教授、海外精通者、コンサルタント等)などが選ばれることが多いようです。
新幹線の非常ブレーキ
専門性と同時に必要なのが人間性です。人間性には、その人の個性(性格)と、社外役員の役割をよく理解できる教養の2種類があります。
有名な会社法の先生である上村達夫教授(早大)がよく使われる「社外役員は、新幹線の非常ブレーキの役割だ」というフレーズが好きです。新幹線にはあの強力なブレーキがついているからこそ、300キロ近いスピードで走行できる。しかも有事の際には(停止までに一定の距離は必要だが)安全に、乗客誰一人の首を骨折させることなく停止できる、というものです。
社外役員のブレーキ
これを会社経営に置き換えると、社外役員は、企業価値の増大という経営者の目標を達成することを理解し、全力疾走してもらうようお膳立てする、ただし有事の際には安全に、ステークホルダーを傷つけることなくブレーキをかける、というわけです。
これをはき違えてしまうと、有事でもないのに常に経営者にブレーキをかけ、全力疾走を阻止してしまうということになりかねません。このような理解ができる教養と人間的資質が社外役員には必要なのです。
女性や外国人は必要なのか
現時点では、規則上、女性や外国人の登用についての義務はありません。コーポレートガバナンス・コードにおいて、多様性(ダイバーシティ)が求められているに過ぎません。しかし、この多様性の具現化として最も分かりやすいものではあるため、女性や外国人の登用は増えつつあります。
また、一部の議決権行使助言会社などでは、取締役の選任議案に女性がいないと画一的に社長の選任議案に反対票を投じるといった対応を促す例も見られます。
性別や国籍の問題はセンシティブなので、会社側としてもこれについて声高に反論する例はあまりないように見受けられます。
普段とは異なる視点から経営を批判せよという意味で、多様性(ダイバーシティ)の必要性は分からなくはありません。確かにその一例が女性や外国人であるのかもしれませんが、先述したとおり、外観ではなく「社外役員に求めるもの」をしっかりと満たしているかどうかが重要です。
近年、女性だからという理由だけで、元女性アナウンサーや元女性スポーツ選手、女性タレントなんかを役員に起用しているケースも散見されますが、本当に社外役員に必要な資質を持っているかどうか説明できるでしょうか(もちろん持っている方もいらっしゃるとは思いますが)。
社外役員には、その義務を果たせなかった場合の重い責任も課せられています。本人の側もそれをちゃんと理解していないと、お互いに不幸な結果になりかねません。
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