その4 どの監査法人を選べば良いのか

大手監査法人がよいのか

監査法人は、最低5名以上の公認会計士から構成されますが、大規模法人になると数百名のパートナー(共同出資者)と数千人のスタッフ公認会計士から構成されています。現在日本には四大監査法人と呼ばれる大手の監査法人があります。このうち特に3つの監査法人(あずさ、新日本、トーマツ)は、ほぼ同様のIPOに対する取り組みを行っています。

毎年一定のIPO実績もあり、ノウハウも人員も揃えていますが、やはり監査法人全体でのリソース不足は否めず、全てを引き受けることができないのが実情です。それでも各法人とも年間50社程度は新規契約しているとみられますが、オファーに対する受嘱確率は、10件に対して12件程度だと聞いています。

 

中堅・中小監査法人はどうなのか

では大手以外の監査法人はどうでしょうか。実は国内には250社以上の監査法人があります。その中で上場会社を監査している監査法人が100社ほどありますが、大手監査法人だけで75%近くのシェアがあります。残りは中堅監査法人と呼ばれる監査法人が何社かと、さらに中小規模の監査法人もいくつかあります。具体的なリストはこちらの日本公認会計士協会のページに載っています。
 リンク:日本公認会計士協会監査法人リスト

この中で中堅監査法人は比較的IPOにも力を入れており年によっては大手監査法人よりも多くの実績を残すようなケースもあります。いっぽう、中小監査法人になると人員規模も小さいので数年に1社やれれば良い方ではないでしょうか。

 

どの監査法人でも大丈夫か

どの監査法人であっても、上場のための監査証明という意味では重みは変わりませんので、証券会社や証券取引所として拒絶する理由にはなりません。しかし完成された上場会社とは異なり、発展途上の新興企業を監査する独特のノウハウやセンスといったものは、やはりIPOに慣れた公認会計士がいたほうが、会社としてはやりやすいのは言うまでもありません。気をつけなければならないのは、上場会社を監査できる監査法人であることに加えて、過去に監査品質上の問題を起こしていないかどうかです。監査法人の中には会計士協会や金融庁などから品質上の問題点を指摘されて処分を受けたりするような法人もあります。このような監査法人は避けなければなりません。

近年では、大手や中堅以外の監査法人によるIPO実績が急速に増えています。自分の会社の規模や業態あるいは特殊性などを考慮し、身の丈にあった監査法人を選ぶというのも正しい選択だと思います。