決算期を変えれば契約してもらえるのか?
決算期を変更すれば監査法人に契約してもらいやすくなるのでしょうか、と訊かれることがあります。少し当たっています。ご承知のとおり、日本の会社の7割近くが3月決算です。また次に多い12月決算や9月決算を含めると、8割以上の上場会社が3の倍数で本決算と四半期決算を繰り返します。
監査法人側の繁忙事情を考えれば、3月決算よりも、3以外の倍数の決算月の方が喜ばれるのは当たっています。もっとも、大手監査法人になると、比較的業務の平準化が進んでいますし、リソースのやり繰り可能な範囲が広いので、そこまで強いインパクトにはなりませんが、中小規模の監査法人であれば、決算期変更のオプションはアリだと思います。
本社を地方に移すと契約されやすいのか?
本社を東京から地方に移すという選択肢も考えられます。これは、大手監査法人と契約したいのだけど、東京本部では断られそう、という場合に時として有効です。
大阪や名古屋のほか、監査法人によって強い拠点(たとえば、札幌は新日本、広島はあずさ、福岡はトーマツ、など)があるので狙い目です。
とはいえ、縁もゆかりもない地方にいきなり移るのは現実的ではないですし、商売や人材採用の面でのデメリットも大きいので、何らかのつながりがある場合に限る、と考えておいた方がよいでしょう。
なお、はじめから中小監査法人を考えているのであれば、地方は得策ではありません。大都市圏以外でIPOを受け入れられる中小監査法人はほぼありません。
リスクの低い会社が選ばれる
決算期や本社所在地の話はいわば小手先の問題です。真の意味で受け入れられやすいかどうかは、ビジネスモデルと経営者の誠実性にかかっています。監査法人は民間企業ですので、提供するサービスと受け取る監査報酬が見合っている必要があります。
監査は指摘やアドバイスを通じて正しい決算書作りを指導し、監査証明を発行するサービスだという勘違いが見られます。もちろんそのようなコンサルティング機能もありますが、監査の本質は、会社の作成する決算書が正しいことに対し、連帯して責任を負うというサービスです。したがって、監査報酬との釣り合いを図るのは、その会社のリスクの大きさということになります。
全ての決算書には間違っているかも知れないというリスクが必ずあります。それを様々な監査手続によって軽減を図り、一定水準の信頼性を得られたところで監査証明を発行します。そこまでの対価が監査報酬ですが、どれだけやっても信頼性を得られない、あるいは得られるかどうかの見定めが付かない、という会社の監査は監査報酬が無限大になってしまいますので、そもそも契約すること自体が困難です。
そう考えていくと、経営者が誠実に、しかも分かりやすいビジネスモデルで決算書の内容を説明できることが監査を受けてもらえる一番の特効薬ということが分かります。
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