その4 審査に落ちない事業計画

スキのない事業計画を目指そう

証券審査において、事業計画は極めて細かく詳細に内容を審査されます。全体的な仕上がりはもちろんのこと、その根拠について詳しく質問がされるでしょう。それによってその計画の信頼性や蓋然性を評価するのです。

まず計画数値の内訳がしっかりとしていることが重要です。例えば売上計画であればその内容が細かく顧客別や商品別、サービス別などに分かれているか、計上の時期が合理的に配分されているか、また費用の計画であればその支出の必要性や金額が正しく見積もられているか、ということが細かくチェックされます。

出来上がった数値に関しても、前期と比べて違和感がないか、もし変動がある場合にはその理由が合理的に説明できるか、金額だけでなく財務比率などいろいろな方面からチェックが行われます。セグメント別、月別、顧客別など様々な部分で矛盾がないかどうかよく確認しておかなければなりません。

 

おかしければ素直に直そう

こういった説明が整然と出来ず、矛盾や不整合が説明できないと、その事業計画の信頼性は地に落ちます。特に直近1年の予算などで矛盾が生ずれば致命的です。ここで意地を張って屁理屈を並べ立てて一生懸命に説明しようとすると、かえって傷口を広げることになりかねません。審査担当者は決して意地悪をしているのではなく、自分も審査会において整然と説明ができるように準備をしているだけです。もし、おかしいところがあるなら、素直に認めてその部分を修正した方がよいでしょう。

 

証券審査と取引所審査のスタンスは少しだけ違う

証券審査における事業計画の位置づけと証券取引所審査におけるそれには少しだけ違いがあります。証券審査における審査の主眼は、「この会社は信頼できるに足る立派な会社です」ということを取引所に対して整然と説明することです。そのため、作成のプロセスは妥当か、理路整然と矛盾の無いストーリーになっているか、中長期的に成長又は安定した企業経営が見通せているか、といった点が関心事です。

これに対し、証券取引所の関心事は、翌期の業績です。公表した業績予想通りに事業が進捗しているかどうかを神経質に審査します。そのため、3年後の中期計画にはさほど関心は示さず、当期(若しくは翌期)の着地見込の蓋然性に注意が払われます。

 

説得力のある事業計画にするために

事業計画の数値達成のためには、通常その前提として目標となるものがあるはずです。これをKPIと言いますが、例えば販売数であったり、店舗数であったり、顧客数であったり、会員数であったりといった指標がこれにあたるでしょう。トップダウンで目標となる財務数値を掲げたとしても、その根拠となるKPIと連動していないと、事業計画の説得力はありません。

直接的に「売上高××円を目指す」ではなく、そのKPIを達成し、結果として事業計画が達成されるというのが本来の姿です。

 

長期的な展望

事業計画は通常3年、長くても5年程度までです。それ以降は定量的な計画を立てることは困難です。しかし、投資家の中には長期的なスタンスで投資を考える投資家も少なくありません。また企業は基本的にゴーイングコンサーンであることが求められますので、10年後も20年後も会社として成長しながら存在し続けることを示す必要があります。

このような長期的な展望や目標を、事業計画の中に織り込むということも必要になってきますので、既存の事業のあり方や新規事業とのポートフォリオなどの面から、定性的に説明することが必要になってくるでしょう。