その3 必須の人たち②

証券印刷会社

元々は会社の株券を印刷する会社のことを言いました。大手の印刷会社をはじめ、以前は多くの会社があったのですが、有価証券報告書など法定提出書類の作成支援などの業務が加わり、様々なコンサルティング機能が付加されていく過程で、現在、国内では実質2社(プロネクサスと宝印刷)の寡占状態です。

提供するサービスは両社ともほぼ同じで、書類の印刷・製本は勿論、各種書類のひな形や作成手引き、便利な作成ツールの提供、ドラフトのチェックや提出スケジュール管理といったコンサルティングが受けられます。

昔のように印刷した書類を当局や取引所に持参して提出するのではなく、所定のフォーマットによる電子提出をスピーディに行うことが原則になっていますので、すべてを社内でやることは現実的ではありません。

契約時期は、上場申請書類のうち、Ⅰの部やⅡの部を作り始めるころ、つまり直前々期(N-2期)が終わる頃でよいでしょう。

 

株主名簿管理人

株主名簿管理人とは会社に規定された株式事務を代行する機関のことをいいます。上場にあたっては名簿管理人の設置が義務づけられています。定款において株主名簿管理人の設置を定め、いずれかの代行機関と契約する必要があります。

以前は代行機関を置かずに社内の総務部で自ら行うことも認められていましたが、現在では設置は必須です。手数料は株主数により異なりますが、手間と正確性を考えればリーズナブルな水準だと思います。

上場直前期末(N-1期)頃までに決定しておけば十分でしょう。

現在、東京証券取引所で代行機関として認められているのは下記の6社だけです。

 

三菱UFJ信託銀行

三井住友信託銀行

みずほ信託銀行

株式会社アイアールジャパン

東京証券代行株式会社

日本証券代行株式会社

 

多くの上場会社が上記の信託銀行のいずれかと契約しているようです。2020年に、三井住友信託とみずほ信託において、株主総会の議決権行使書の集計に関する恒常的なミスが発覚しましたが、現在では改善されているようです。そのほか、証券代行専業の2社と、アクティビスト株主対策コンサルでも有名なアイアールジャパンが認定されています。

 

証券保管振替機構

略称を「ほふり」といいます。

以前は紙で印刷されていた株券が、現在では電子化(株券不発行)されています。これに伴い、創設されたのが「ほふり」です。上場会社の株券はすべて電子化されていなければならず、証券会社への保護預けも必須とされているので、上場申請に際しても同様の体制をとっておくことが求められます。

これにより、株主の管理もこの「ほふり」に一元集約管理されるので、株主にとっても、名義変更や預け先証券会社の変更などがスムーズに行えます。

 

銀行

銀行と付き合いのない会社はまずないと思いますが、たとえ借入金がなくてもメインバンクは決めておく必要があります。

特に上場により調達した資金を入金する銀行は、「払込取扱場所」として上場時の有価証券届出書にも明記されます。どの銀行を入金口座にするかを決め、事前に銀行側と打ち合わせをしておく必要があります。銀行側でも社内決裁が必要になりますので、あまり直前に交渉を始めると間に合わないという悲劇の可能性もありますので注意しましょう。

ちなみに、調達資金の払込み手数料は申請会社側が負担することになります。ただし定価表はあってないようなものですので、交渉の余地は十分にあると思います。