株式の流動性を上げる
上場には、一定の流動性すなわち売買が行われる余裕度の確保が求められます。上場するための形式基準が定められていますが、実際にはそれ以上の流動性がないと活発な売買が行われません。
上場前の流動性はゼロです(当たり前ですが)。そのため、IPOの段階で、ある程度の株式数の新株発行と既存株主からの売出しが求められます。流動性が低いと、株主になってもらいたい投資家に株を買ってもらうことができなかったり、株価の下落局面での株価下落を助長するなどの不都合が生じますので、流動性はなるべく確保した方が良いです。
投資家の関心は移ろいやすい
上場直後は相場が過熱して盛んに売買が行われることも多いのですが、一般投資家の関心が薄れるとどんどん売買高が萎んでいってしまいます。特に安定株主対策を意識しすぎて、市場への放出額を抑えてしまうと、流通比率も低くなってしまいます。もちろん流通比率が低くても、そのなかでの売買が活発であれば構わないのですが、そのためには業績の一層の向上、より積極的なIRなどの施策により市場を刺激していくことが必要になります。
どの程度の流動性があればよいのか
どの程度の流動性があればよいのかは一概には言えませんが、最低でも時価総額に対する回転数、つまり、(月間売買高×12)÷時価総額が年間複数回になっていることが理想です。時価総額分の株式が年間複数回入れ替わるイメージですね。これが1回転を下回ってくると危険水域かと思います。
安定株主対策と相反する部分もあるので、このあたりのバランスをよく考える必要があります。
上場前の株式分割
東証では株式1単元(通常100株)での取引金額が50万円以下になるように、株式数の調整を行うことを推奨しています。強制規定ではありませんが、 IPO の際には通常これに従うことになります。株価に換算すると5,000円以下になるように設定することになります。想定される時価総額をベースに発行済株式数を調整することで、適正な株価水準になるように株式分割を行います。
上場後の株式分割
株式分割は上場後にも行われます。先述した流動性の確保のためにも株式を分割することは大変有用です。上場時の公開価格よりも高い値段で株価が推移すれば株式を分割することで1単元あたりの取引金額を抑えることが出来、それにより流動性が向上し、株価の動きにも良い影響を与えることができます。
株式分割の戦略には様々な考え方があります。会社それぞれの戦略の下、必ずしも50万円以下にはこだわっていない会社もあります。売買単位が大きいと個人の株主はなかなか入りませんが、大口の機関投資家に注目されているような会社はそれでも良いでしょう。
ロックアップ
ロックアップとは、上場から一定の期間、既存の株主がその株式を売却しないことを約束することです。ロックアップには、制度的に証券取引所に対して確約するものと、ファイナンスに関連して主幹事証券会社に対して任意に約束するものの2種類があります。
制度ロックアップは取引所の規則として定められているものなので、確約がなされていないとそもそも上場申請を受け付けてもらえません。代表的なものは、上場直前のファイナンスについての取引規制で、会社が直前期首(N-1期)以降に行った第三者割当増資により株式の割当てを受けた株主は、その株式を上場後6ヶ月間は売却せずにに保有することが求められています。これは上場間際に駆け込みで株主になった人が短期で利得を得るのはズルいという発想に基づきます。
相場を守るためのロックアップ
任意ロックアップの方は、上場直後の株価水準を安定させたい主幹事証券会社の意向により行われます。上場時にせっかく高い株価がついても、大量の売り注文が出てしまうと株価が押し下げられますし、一般投資家から見ても、その会社の大株主や役員が上場直後に売却することは、今後の業績の伸びに不安材料があるのかなど、投資判断を迷わせる恐れがあるので、事前に主要な株主から一定期間は保有株式を売却しないことを約束してもらうわけです。
一般的には、大株主や役員株主について「上場日後90日目又は180日目まで」を売却停止とすることが多く、ロックアップ期間中であっても株価が公開価格の1.5倍以上になれば解除される条項を付すこともあります。
任意ロックアップは、あくまでも主幹事証券会社の要請です。通常は発行会社との利害も一致するので付すことが多いのですが、どうしても売り抜けたいんだという株主がいれば、強制はできません。
ロックアップの内容は有価証券届出書や目論見書を見れば書いてあるので、「あ、180日経った時点で大株主が売りに出る可能性があるから、株価が下がるかもしれないな」などと予想することができます。
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