その2 会計制度の整備

会計制度の整備

まずはじめは会計制度です。最も大切なことは、アタマの中をこれまでの税務会計から企業会計に切り替えるということです。企業会計に精通した経営者は必ずしも多くないと思います。税務と会計を切り離して有税で処理しましょう、という発想はなかなか馴染めないかもしれません。

 

企業会計基準

企業会計基準への準拠にあたっては収益認識基準など最新の会計基準ばかりではありません。もうかなり浸透したはずの退職給付会計や税効果会計、減損会計あるいは各種の引当金などといったものについても、税務会計だけに準拠していると、一切採用していないというケースも珍しくないでしょう。また連結決算も導入していないケースは多いと思いますので、抜本的な改革が必要です。

 

過年度決算

次に、過年度決算の検証も大切です。先述の通り、企業会計基準に準拠していない決算の場合には、再計算を行った上で、過年度決算を修正して株主総会で再度承認を得ておく必要がないかどうか検討する必要があります。

 

会社によっては銀行対策、まあ有り体に言うと粉飾ですが、会社を潰さないためという優先課題の中でやむを得ず決算を操作したような過去もあるかもしれません。よほど悪質なものでない限り致命傷になることはないと思いますが、このような場合にも、さかのぼっての修正の要否について検討しておく必要があります。

 

経理体制の整備

3つ目が経理体制の整備です。経理部人員の人数や能力を検証するわけですが、多くの場合は人材の補強が必要だと思います。現有勢力をうまく活用しながら、人材補強が最小限で済むようなプランを考えることが必要です。最終的な陣容の目標を考えておくこともことは必要ですが、どのタイミングでどれだけの補充を行っていくかということが大切です。小規模の会社でも、CFO、経理主任、その他スタッフ2名程度は最低限必要でしょう。最近ではCFOや経営主任クラスに公認会計士の資格を持った人材を充てることも増えています。

 

会計システムの導入

4番目が会計システムの導入です。ほとんどの会社では、なにがしかの会計システムは利用していると思います。上場を目指すにあたっては、信頼性があり内部統制にも耐えうるようなシステムの導入が必要ですが、かといって大掛かりなERPを導入する必要もありません。最近流行りのクラウド型も選択肢ですので、身の丈に合ったシステム導入を進めましょう。

 

特殊論点の会計にも注意

上場準備の過程では様々な特殊論点も出てくると思います。よくあるのが組織再編です。M&Aだったりグループ内の再編だったり、企業再編に関する会計処理のが必要な場面は少なくないと思います。

また海外子会社の決算などについても、現地の会計事務所任せにはできない部分もあるでしょう。

こうなってくると、なかなか自助努力だけでは追いつかない部分もあるかと思いますので、顧問の公認会計士やコンサルタントをうまく利用して切り抜けましょう。