その3 選択しうる会社の機関

会社法上の大会社

資本金5億円以上又は負債総額200億円以上の会社を、会社法上の大会社といいます。上場して資金調達を行うと、結果的に資本金が5億円を超えることが多いですが、必ずしも大会社でなければ上場できないというものではありません。一方で、会計監査人の設置など、大会社でなくても大会社レベルの対応が要求されるものもあります。

 

選択できる機関

会社法では様々な形態の会社の機関が定められています。上場するにあたっても、いくつかの選択肢はあります。選択の余地がないのは株主総会です。株式会社においては、株主総会の設置は必須ですので、これは迷う余地はないでしょう。

 

正しい取締役会

次に取締役会ですが、上場するにあたっては設置が必須となります。設置時期については明文規定があり、「上場申請日から起算して1年以上前」とされています。それまでの期間は取締役会は設置せず、取締役の選任のみで構いません。 

ところで、近年ではだいぶ正しい解釈になりつつありますが、取締役会は取締役すなわち業務の執行を取り締まる役割です。もともと欧米では、業務執行役員と取締役会は明確に区別されていましたが、この制度を日本に輸入する際に取締役会を必須としたものの、各社にとってそんなに多くの適任者を確保するのは難しかったため、業務執行役員との兼任を認めてしまいました。そのため、「取締役」=「社長をはじめとする執行役員」、ということになり、執行と監視の役割がごちゃまぜになってしまいました。

 

監査役会

監視役としては、監査役及び監査役会というものがあります。上場にあたっては、監査役会の設置が必要となります。

監査役会を設置するためには少なくとも3名以上の監査役が必要となります。このうち半数以上は社外取締役である必要があります。監査役会の代わりに、監査等委員会設置会社や指名委員会等設置会社とすることも可能です。

 IPO-監査等委員会で上場

監査役をどのタイミングで設置しなければならないかについては、特に明文規定はありませんが、ほとんどの会社において、上場申請の3年以上前から設置していると思われます。一方、監査役の設置については、上記の通り最低でも3名以上の監査役が必要となりますので、申請直前々期(N-2期)あたりで選任することが多いようです。最も遅いタイミングで 申請直前期(N-1)中に行われる定時株主総会(N-2期に係る定時株主総会)で設置することになります。いずれにしても、上場審査において1年以上の適正な運用期間が求められますので、審査期間不足にならないよう注意する必要があります。 

会計監査人の選任

会計監査人も設置が必須となります。会社法上の大会社では、会計監査人の設置は必須ですが、上場にあたっては、大会社でなくても会計監査人は設置しなければなりません。

第三者の会計監査人が、取締役会や監査役会と並んで会社の機関と規定されることに違和感を覚える方も多いと思います。元々取締役会も監査役会も、経営執行者ではない外部の監視役という趣旨を持っていますので、外部者である会計監査人がここに並んでいるということも納得いただけると思います。

なお、会計監査人の選任にあたっては、選任議案を事前に監査役会で承認したり、監査報酬について監査役会の同意を得る必要がありますので、それぞれ取締役会で勝手に進めないようご注意ください。

 IPO-監査法人の選定