その2 公開価格の決定

第1回目の訂正届出書

前述のようなプロセスを経て、承認から約2週間後に仮条件決定を決定し、取締役会で決議を行います。

同時にその内容を記した1回目の訂正届出書を提出します。訂正届出書と言うと名前のイメージが悪いですが、決して誤りがあったから訂正するという意味ではなく、最初の届出書提出時に決まっていなかった事項をアップデートして提出するものです。もちろんこの場に乗じて本当の間違いを直してしまうことも時々見られます。

 

仮条件は、○○円~○○円というレンジで決定されますが、訂正届出書にはこの平均値をもって記載します。当初の想定価格との差が生じますので、調達金額も変更になります。そのため資金使途の記載もこれに整合するよう微修正が必要です。

 

また、この段階で幹事証券会社(シンジケート団)による引受株式数の内訳や、親引け(公募株式の優先割当先)の詳細などが確定しますので、これらの情報も訂正届出書に記載します。

 

公開価格の決定

仮条件が決まると、ブックビルディングのプロセスに入ります。ビックビルディングには、機関投資家だけでなく個人投資家も参加できます。

このプロセスを経てさらに2週間程度後に公開価格が正式に決定され、2回目の訂正届出書を提出します。市況に問題がなければ、仮条件の最大値で決定されることが多いです。

 

公開価格とは、発行価格(公募の際の新株の発行価格)と、売出価格(売出の際の既存株主による売出価格)の総称ですが、両者は同額になります。そしてここから引受人(主幹事証券会社)の手数料(スプレッドといいます。通常7~8%。)を差し引いたのが「引受価額」で、これに株式数を掛けたものが会社や株主の手取り額になります。

 

オーバーアロットメント

また、このタイミングで、オーバーアロットメント(OA)に関する内容も決まります。OAは、新規上場の際の需要が十分にある際に、主幹事証券会社が発行会社の株主から株式を借りて市場に放出し、その後の株価に応じて、株価が低迷していれば市場から取得のうえ借りた株式を返済(シンジケートカバー取引)、株価が高騰していれば会社が追加で主幹事証券会社宛てに第三者割当増資してその株式で返済します(グリーンシューオプション)。

多くのケースでは株価上昇局面になりますので、グリーンシューオプションが行使され、発行会社にとっては結果的に追加の資金調達が行われることになります。

公開価格が決定すると、新株発行についての募集が開始されます。上場承認から概ね4~5週間後に実際の上場すなわち株式の売買が開始されます。

 

公開価格は安すぎる?

よく日本では、公開価格が低めに決定されるという批判があります。実際、上場した後に付く初値が公開価格を大幅に超えるのが一般的となっています。これは見方を変えれば実際の時価よりも低い価格で公開価格が決まっていると解釈することができます。公開価格が低いということは、投資家や証券会社にとっては利ざやや手数料を稼ぐという意味で有利に働きます。一方、発行会社や既存の株主にとっては少ない調達金額にとどまることになりますので不利に働きます。最近は公正取引委員会などがこの問題に注目し調査に入っているようです。

 リンク:値決めの問題点