その6 移行のプロセス①

監査等委員会設置会社への移行プロセス

モニタリング型統治への移行で最も現実味のあるのは監査等委員会設置会社への移行と考えられますので、その場合のプロセスについて見ていきましょう。

主な段取りは次のとおりです。

・社内の意識共有

・候補者の選定

・プロジェクトチームの発足とコンサルタント登用

・諸規程の改訂

・組織図の見直し

・取締役会、株主総会の議案作成

・移行後の会議体運営準備

 

社内の意識共有

見落としがちですが、結構大事なのが、この意識共有です。誰が言い出しっぺなのかにもよりますが、少なくとも現在の取締役全員、監査役全員のコンセンサスは得ておく必要があります。そもそも社長が乗り気でないと絶対にうまくいきません。面倒くさいから途中でやーめたにならないよう根回ししましょう。

まだまだ委員会設置会社の知名度は低いですし、監査役会設置会社に馴れたご高齢の役員の中には、新しい制度にアレルギー反応を起こすこともあります。役員メンバーの力関係に注意しながら、進めるのがよいでしょう。

これまでこのブログで述べてきたようなことを丁寧にかつ確実に理解してもらうことが重要です。

 

候補者の検討

これまでの監査役をそのままスライドさせるだけならば話は早いかもしれんせんが、新たな候補者を探す場合には十分な時間を見ておく必要があります。従来メンバーであれ新任メンバーであれ、監査等委員会の制度への馴染みが薄い場合には、十分な事前レクチャーも必要でしょう。

監査等委員は最低3名ですが、うち2名は社外取締役である必要があります。社外の有識者と言えば、弁護士や公認会計士などの士業、大学教授などの専門家、他の会社の経営者をはじめとした実務経験者などが人気です。女性や外国人といった社会的要請をここでうまく充足する手もあります。

近年流行りのスキルマトリックスをイメージして、専門分野に過度の偏りがないように気を付けましょう。

 

プロジェクトチームの発足とコンサルタント登用

移行にあたってやらなければいけないことはたくさんあります。COOや管理担当役員あたりが中心になり、経営企画や総務部門が中心となってプロジェクトチームを発足させるのがよいです。

会社規模にはあまり左右されませんので、2~3名もいれば十分です。取締役会や株主総会の運営に携わる担当者、諸規程の管理を行う担当者を中心に、その他様々な文書作成のためのスタッフがいるとよいでしょう。

また外部のコンサルタントを登用するかどうかも判断します。委員会設置会社移行に携わった経験のあるコンサルタントを選びましょう。いちばん確実なのは信託銀行です。株主総会議案や登記関係など実務に長けています。ただし、コンサルフィーはちょっと高めで数百万円程度でしょう。

法的な知識の面では弁護士や司法書士です。現在の顧問の先生が詳しいようでしたら迷わず依頼しましょう。

その他経営コンサルタントなども経験の有無で判断するとよいでしょう。IPOコンサルタントや証券会社などは必ずしも詳しいとは限りません。

そもそも、コンサルタントは必要なのかというと、必須ではありません。プロジェクトチームの中に、専門書を2~3冊読んで、ネットで他社事例を検索しまくり、そして規程の改訂作業などに時間が取れる人がいるなら、十分に自力でできると思います。頑張ってください。