その4 会社法が用意する統治体制②

監査等委員会設置会社

最後に、わが国独自の折衷案、監査等委員会設置会社について見ていきましょう。

モニタリング型統治のひとつの例である監査等委員会設置会社は、指名委員会等設置会社同様、執行取締役(執行役員を兼務する取締役)と、非業務執行取締役(社外取締役を含む)からなり、最小限の基本構成は代表取締役+複数の社外取締役となります。

監査等委員会設置会社には執行役という会社機関はないので、業務執行取締役は多くの場合執行役員を兼務します(執行役員制度が必須なわけではありません)。

 

「重役=取締役」ではない

取締役会はあくまでも監督の場なので、経営陣が偉い順に取締役になる日本古来のしきたりは関係ありません。たとえば、偉い順に、社長・副社長・専務・常務・部長・・・といった重役がいた場合に、このうちの社長と管理担当部長のみが取締役を兼務し、残りの重役は、取締役ではない執行役員(専務執行役員など)とします。つまり、「重役=取締役」ではなく、取締役会では、取締役を兼務することになった社長と管理担当部長が、他の社外取締役に対峙する、という構図になるわけです。

 

監査等委員は議決権を持つ

監査等委員は取締役ですが、非業務執行取締役として監査等委員会を結成します。ちなみに、監査等委員会の「等」は監督のことです。また、監査等委員は取締役ですから取締役会での議決権を持つことになりますので、強力なモニタリング力を持つことになります。

監査等委員会設置会社における取締役会での権限は、指名委員会等設置会社同様に、経営基本方針や人事、役員報酬といった大局的な論点に限定することも出来ますし、マネジメント型統治の監査役会設置会社に近い広範な権限を持たせることもできます。段階的に移行していきたいというニーズにも応えられます。

 

監査等委員は非常勤でもよい

監査等委員は監査役とは異なり常勤性は求められていません。これは会社の内部統制組織に則り、組織的な監査を行うことが前提になっているためで、内部監査への一定の依拠を実現することで、必ずしも常勤でなくても良いという考え方をとっています。監査等委員の任期は2年間であり、監査役の4年間よりは短いですが、取締役の1年間よりは長くなっています。

 

新興企業に向いている

個別の業務執行意思決定は、取締役会から経営会議等に委譲することによって、経営陣による強力な業務推進を後押しし、迅速で効率的な経営を図ることができます。このように経営執行側に強力な権限を与えることと引き換えに、その業務執行の妥当性を取締役会が監督するという立場になるわけです。強力なリーダーシップを持つ経営者がいるような新興企業には適しています。

この組織形態は必ずしも大企業に限らず、小規模の会社であっても採用しやすくなっており、全上場会社の3割程度が採用しています。