諸規程の改訂
まず必要なのは、定款の変更及びそれに関連する諸規程の変更案作成です。会社の機関設計は定款に定める事項ですので、株主総会に諮り特別決議(2/3の賛成)を得る必要があります。
そのほか、監査役会規程の廃止と監査等委員会規程の新設、取締役会規程の変更といったことは当然ですが、職務権限規程をはじめとする各種の社内規程の改訂も必要になってきますので、その洗い出しが必要になります。
取締役会からの権限委譲
モニタリング型統治へ移行するからには、これまで取締役会の権限だった事項の下位委譲を検討すべきです。中期経営計画や会社再編関連、重要人事などの経営根幹に関わる事項以外は取締役会ではなく取締役(実際にはその取締役の命を受けた執行役員、そしてその会議体である経営会議等)に委ねることができます。いきなり何もかも委譲するのではなく、まずは重要性の低い諸規程や金額の小さい決裁などから委譲してもよいでしょう。これらは取締役会規程や職務権限規程に織り込みます。
監査等委員会規程
これまでの監査役会規程に代えて、新たに監査等委員会規程を策定します。監査等委員会規程は、取締役会決議ではなく、監査等委員会決議になりますので、第1回目の監査等委員会において決議できるよう、準備しておきます。
規程の内容については、専門書に譲りましょう。
なお、監査役会規程から監査等委員会規程への移行については、最終の監査役会において監査役会規程の廃止を決議してもいいですし、監査等委員会への移行により自動的に監査役会規程は消滅するという考え方もあるようです。
内部監査部の位置づけ
組織図の見直しも必要です。監査等委員会の設置はもちろん、内部監査室の位置づけや、監査等委員会の補助者など、見直しの要否を検討します。
また、従来、社長のスタッフ部門だった内部監査室を、監査等委員会の指揮命令下におくことも考えられます。
監査役会設置会社の場合には監査役会の補助者を置くケースがよく見られます。実際には総務部の担当者が一部の時間を使って監査役監査のサポートにあたるという運用が多いかと思います。
通常は、内部監査室は社長のスタッフ部門という位置づけになっているため、本来的には監査役監査との連携は必要であるものの、監査役監査をサポートするという立場にはありません。
監査等委員会設置会社に移行した場合にはこの内部監査室そのものを監査等委員会の指揮命令下に置くことも可能になります。そうすることによって、連携以前に一体となって監督監査を行うということが可能になりますし、従来の監査役会補助者との重複感を解消することも可能になります。
株主総会、取締役会、最後の監査役会と最初の監査等委員会
・株主総会の議案作成
定款変更のための株主総会議案を作成する必要があります。またその議案を決定するための取締役会議案、その他諸規程の改訂を決議するための取締役会議案を作成します。
・最後の監査役会
最後の監査役会に特別な内容はありません。定時株主総会に向け、年度の監査報告書を発行決議する際の定時監査役会が最終回になります。
株主総会議案として、監査等委員の選任議案が出るでしょうから、その同意決議を行います。これは監査役の選任議案とまったく同じ手続きになります。
・最初の監査等委員会
株主総会において定款変更が承認されたのち、速やかに第1回目の監査等委員会を開催します。ここで、監査等委員会規程の承認や、委員長(筆頭監査等委員)、報酬、役割などを決定します。第1回目の委員会は株主総会当日の臨時取締役会の後に開催するのがよいでしょう。その後、監査計画の策定作業にも入りますが、こちらは翌月の定例監査等委員会からスタートしてもよいです。いずれにせよ、これらの準備を可能な範囲で前もって準備しておくことが望まれます。
指名・報酬委員会
監査等委員会設置会社への移行に合わせて、任意の指名委員会や報酬委員会を設置するケースも多く見られます。
コーポレートガバナンスコードにも推奨されていることですが、取締役の任命や報酬の決定は独立社外取締役の関与が必要とされています。監査等委員会においてもその関与は必須ですが、監査等委員会をメンバーに含む形で指名委員会や報酬委員会(両方を統合させて指名・報酬委員会とするケースも多い)にその役割を担わせ、役割の明確化を図るという方法は有効です。
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