株価上昇ストーリー
IPOに際しては、株価の上昇ストーリーが欠かせません。 企業が将来にわたって成長していきますから 一株あたりの価値もそれにつれて 値上がりしていくという筋書きです。 この筋書きに不整合が生じないように資本政策のイベント、すなわち増資や株式の移動の際の取引価格を決めていく必要があります。
ダウンラウンド
しかし 残念ながら 企業の業績が思わしくなかったり 市況の変化により株価上昇ストーリーがうまく描けずに株価が下がってしまうというシナリオに陥るケースもあります。これをダウンラウンドといいます。通常は低い金額で出資した株主がIPOによって高く売却することができるはずですが、ダウンラウンドの場合には逆ざやが出てしまうわけです。そのため、従来であればダウンラウンドになるような局面では、IPOを諦めるもしくはしばらく延期するというケースが多かったのですが、近年ではそれでも投資資金を回収するために逆ざやを覚悟でIPOをするというケースも散見されるようになりました。2022年は91 社の IPO がありましたが、そのうちの実に19件がダウンラウンドだったと推定されています。
IPO後の株価ストーリー
上場 当日は主幹事証券会社の会議室に経営陣一同が集まって、株価ボードをみんなで眺めます。
リンク:上場当日の様子
うまくいけば公開価格を2~3倍上回るような初値がつきますし、あまり人気のない銘柄は公募割れといって公開価格を下回る株価がついてしまうこともあります。もちろん初値だけで一喜一憂する必要はありません。しかしIPO直後の株価は高騰しやすく、その後は公開価格に向かって収斂していくことが一般的です。上述してきたように、公開価格は類似企業などを参考にしながら入念に決定されてきたものですからそこに近づいて行くわけです。
株価が下降し始める
株価が下降を始めるきっかけは、1つに売買高の低下があります。売買高が低下してくると株価はじりじりと値を下げていきます。また新規上場から60日あるいは90日といった一定の期間ロックアップといって大株主の所有株の売買が停止する期間があります。この期間が明けると 一部の大株主は株式を市場に売却しようとします。株式の売却があると、需給のバランスの関係で株価は下がりますし、それを見越してジリジリと株価が値下がりすることもよく見られます。
株価が落ち着くまでには一般的に1年、長いものですと3年くらいかかります。 そこで初めて企業本来の実力が株価に反映されるようになってきます。そのため、機関投資家の一部などは上場直後の株式には手を出さず、株価が落ち着いてから投資を始めるということも珍しくありません。
それまでの間はどんなに業績が良くてもなかなかダイレクトに株価には反映されませんし、逆に業績とは関係なく株価が乱高下したり、ちょっとしたIRに刺激されて株価が動いたりします。でも結局は市況の大きな波には勝てませんので、そこはずっと耐えるしかないかもしれません。
株価が落ち着いた後は本来の企業価値が体現されるよう、資本政策やIR活動に精を出します。健全な企業であれば、やがて公開価格はもちろん、初値も上回るような時価総額になって行くでしょう 。
公開価格の決定プロセスについては、こちらの記事をご覧ください。
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