その2 個人事務所の決算

個人事務所の決算

法人の決算期は自由に選択できますが、 個人事業主の決算は12月末の一択です。これは所得税の確定申告 対象期間が1月1日から12月31日と決められているからです。 つまり 個人事業の決算は、所得税の確定申告の要件に縛られるということです。 事業の収支を把握するためであれば、どんな形式で行っても構いませんが、 どっちみち 確定申告は行わなければならないので、 これに準じた 決算を組んだ方が手間が省けます。

企業であれば 企業会計と税務会計との間に違いがあるため、 企業会計上の「利益」と税務会計上の「所得」の金額は 通常 異なります。 しかし 個人事業主の決算においては そこを使い分ける必要がありませんので、 税務要件に従った経理・決算を行うことがほとんどです。 そうなると税務上 収入としなければいけないものは収入と記帳し、 税務上 費用と認められるものについてのみ 費用計上するという選択肢になってきます。

 

収入の範囲

個人事業から生じた収入は事業所得の対象になります。 では、「個人事業から生じた」とはどういうことでしょうか。 例えば会計事務所であれば 税務・会計に関わるサービス提供はもちろんのこと、経営コンサルや執筆、講演などに得た収入が事業所得の対象になります。個人事業とは関係のない収入については事業所得にはなりませんので、例えば 同じ講演にしても 会計や経営をテーマにした講演の報酬は事業所得ですが、趣味のクルマをテーマにした講演によって得られた収入は事業所得ではなく 雑所得の対象になります。 

雑所得についても 少額な場合を除き 税務申告はする必要があります。給与所得や上場株式の売買損益 などのように、所得控除の算定方法が決められているものについては迷う余地はありませんが、雑所得については迷うケースがあります。

 雑所得は事業所得と同じように収入から必要経費を差し引いて 所得金額を計算します。必要経費が収入金額の範囲内であればどちらの所得でも結果同じですが、必要経費の方が多いつまり雑所得が赤字の場合には、事業所得の計算に含めた方が、はみ出た必要経費も全額費用として計上することができます。雑所得はどんなに必要経費が多くても、赤字にはできませんが、事業所得の場合には必要経費が多ければ赤字にすることができ、他の所得(給与所得等)と通算したり、翌年度以降に損失を繰越したりできるからです。

もちろん、事業所得にするという決断に際しては、事業への関連性をきちっと税務職員に説明できる自信があることが前提になります。

 

費用の範囲

費用についても、税務上必要経費として認められるかどうかが 判断基準になります。事務所が自宅と独立しているようなケースであれば、そこで発生した費用、 例えば 家賃、 水道光熱費、 備品費、通信費などは堂々と 必要経費にできます。 自宅の一室で開業しているようなケースは費用の按分計算が必要になりますが、 税務職員とよく揉める原因になりがちです。この辺りは細かく解説している書物やウェブサイトなどがたくさんありますので そちらをご覧ください。事業で使っているのか、 普段の生活のために使っているのか曖昧なものもありますが、 事業との関連性が認められるものであれば どんどん必要経費として計上しましょう。例えば 新聞購読料などはもちろん生活でも使いますが事業で必要なんだ といえば大抵 認めてもらえますし、 参考書籍にしても 漫画や小説はダメでも真面目な硬い本であれば認められることは多いでしょう。 飲食代や 贈答品などについても、その用途や 参加者、 贈答先などが明らかになっており、事業との関連性が説明できる限り問題はありません。 取引先だけでなく、 事務所職員との飲食代などについても常識の範囲内である限り 福利厚生費や 社内交際費として問題はありません。

 

領収書の貰い方

必要経費の計上に際して、 気になるのが 領収書の貰い方です。 必要経費だと認めてもらうための大事な要件が領収書の保管です。 原則として 支払者、支払金額、 内容、 日付、 支払先などが記載された領収書が必要です。 

よく迷うのが レジから出てくるレシートで良いのか、 それとも 別途 領収書を発行してもらわなければならないのかという点です。 レシートは正規の領収書ではありません。 決定的な違いは 支払者 つまり あなたの名前が記載されていないということです。よく会社勤めをしていた時には、立替経費精算の際に正式な領収書に会社名を記載してもらわないと、経理部から 経費精算が拒絶されるような経験がおありだと思います。会社の一従業員が支払ったものについて、 それが本当に会社の経費かということを明らかにするために必要なプロセスとして会社が定めたものです。したがって、会社のルールによってはレシートでも構いません。

いっぽう、個人事業主の場合には事業主自らが支出をすることになりますので、 正規の領収書でなくてもその事業に関連する支払いだということが 説明でることが多いので、レシートでも何ら問題はありませんし、 領収書の宛先も「○○事務所」等の正式な屋号ではなく個人名でも問題ありません。 むしろ 摘要欄に「お品代」などと書いてある 怪しい 領収書よりも、細かい 品名が書いてある レシートの方が説明しやすい ケース だって たくさんあります。 

なお、 近距離の電車代やバス代などについては、日付や金額などを帳簿等に記録することで、領収書の保管は免除されます。

また、インボイス制度以降は領収書の記載様式にも決まりごとが増えていますので、そのあたりは下記の記事などをご覧ください。

士業の独立 -インボイス制度への対応